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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
染野 太朗
地に近く黄の色を曳く蝶々よおまえがたてるものおとあらず
水は青く、ないと言ひ掛けザラザラのプールサイドに膝抱へゐき
みづからの空虚にながくくるしみし年月を仮に青春と呼ぶ
昼食(ひる)ひとり済ませぬとほき球場の高校生を画面に見つつ
庭の花グラスに挿してながめをり昼寝のあとは散歩に出でむ
氷片がひしめくグラスくちびるをよせるたび鳴り窓にくる蝶
その昼はパンと饂飩を食べながら腹八分目あたりで泣いた
彼はかつて孔雀の羽に火葬場の夜を隠した じっと視ていて
棄てられし自転車にしておのずから錆びたる鉄の究極を目指す
きみが見えない どんな窓もきみを見るとき鏡になって
ひとつぶのどんぐり割れて靴底に決心のような音をたてたり
いざというとき駆けあがって逃げるため「坂」を名に持ち吾は生きおり
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