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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
棚木 恒寿
手袋の指が充血したるまま捨てられてゐて舗道かがやく
ともすればかろきねたみのきざし来る日かなかなしくものなど縫はむ
唐突に物干し竿は現れて隣家に人が住み始めたり
冷や奴の白き四つ角曲がりきて堂々めぐりに日の暮れてゆく
にんげんはそう簡単には死なぬゆえ桜の下に祖母を立たしむ
背中だけ見せて寝ている村の井戸を汚したせいで帰れぬ人が
自転車の銀の車体にこびりつく昼のひかりは泡のごとしも
こよひはたれが逝く斑鳩の参道をまっすぐに来る無人の自転車
ひつそりと濡れしガーゼが垂れてをり百葉箱の闇を開けば
とよめきて悶すぎたる胸の野やたのしき鳥と眠は来ぬる
すでにして階下ゆふぐれ縹いろ跣(すあし)つまさきそとさし入れて
ドアを出(い)ず、――/秋風の街へ、/ぱつと開けたる巨人の口に飛び入るごとく。
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