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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
都築 直子
一九四九年夏世界の黄昏れに一ぴきの白い山羊が揺れている
残照のなかにおよげり鉄塔のさきの四角の台にひとゐて
するキスとしてくれるキスどちらかは選んでほしい しないのは無し
詩とはなに 硬く尖れる乳首を舌にもてあそぶときの陶酔
イカルス遠き空を墜ちつつ向日葵の蒼蒼として瞠くまなこ
昼のバス閑散として黒人の運転手軽やかに聖歌を歌ひ出づ
「お上んなさい」女の声を読むわれの右手は伸びる品川巻に
交番の裏窓に見ゆる食器洗剤の黄色の液は残り少なし
「俺はなあ」つぶやいてみる川風に力が沸いてくる気がして
「中央線で死ぬことなんてやめてほら日高本線でのびのびと死ね」
すべり落つるその瞬間に白き皿は思ひ出だせり鳥なりしこと
寝るまえの円卓にしてしずやかに馬の肌のいろのパンあり
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