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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
江戸 雪
カ行音躓(つまず)くあなたの吃音に交叉している山の水音
墓石の名前をみればいまさらにこの世に在りて死にて居らざり
乾いてる春をかわして行く君はさよならのときも振り返らない
死がすこし怖い 妻との黄昏は無数の鳥のこゑの墓原
雑踏にまぎれ消えゆく君の背をわが早春の遠景として
君の声も混じっているように思われて春の来るたび耳を澄ませる
きみは温とく、あるいはきみは冷やけく病みびとわれのかたへにゐたり
父といふニコチンまみれの気まぐれは童女(うなゐ)の髪を指もて梳くも
さびしさは父のものなり水底(みなそこ)の泥擦り上げて真鯉浮かび来
降りみだれみぎはに氷る雪よりも中空にてぞわれは消ぬべき
遠空に音なき雷が瞬きて人ひとり娶らんおののきを持つ
婚姻のつめたくひかる虹のため足らざる色を持ち寄りにけり
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