さいかち 真のアーカイブ

おおおおお、お前は見たか百房のみのれる丘の公開処刑

戦力外と宣告するのは紺いろのスーツの男 お前は俺だ

老いづける歌の友らと白き酒飲みてほのぼのと語ることあり

家の具みなはこび去りたる此家にしまらく我は立ちて思へり

フェイクファーかすめた指にしみついて恋はいつでも冬の匂いだ

店頭に並ぶ無眼の目刺にもどどっと春の怒濤が甦る

犬の事情わたしの事情ゆうづつを仰ぐかたちで枯れ草蹴りぬ

黒々としげる樹海の遥けきにパンケトー・ペンケトー二つ湖

百八まで卿らは生きよ吾は間なく終らむといふ火酒また呷り   

篁の奥に静かに湧く水の傷みを思う眠らんとして

みずうみを撃ちたるあとの猟銃を寝室におき眠る少女は

こころみに石をひろひて投げて見むねぶるが如し春の川水

 をのもしれなきてしおもてひとしらしとひてもをしてきなれしものを

 老いの書に史記をひもどくいつよりか如月いまだ立ち戻る冷え

 マラソンの三万人の人の河都市の静脈を流れゆきたり

 寒晴れの真白き山のとんがりを奪ひてゆかな明日の心に

 紅梅の花にふりおけるあわ雪は水をふくみて解けそめにけり

水低く鳴き渡る鴨力あり明日ならず今日ならぬ闇のはざまに

病得てすこし向こうへ深くなる顔はあなたの顔のままだが

打ちこみゆく仕事われにあれ棋士ふたり投了ののち黙して憩える

身体もう返上したいといふ母よ椿のはなを食べにゆかんか

 ジェンダー講座の学生いわく「平等と幸福は必ずしも両立しない」

目には目を 一念のはてかきくもり残れる彩ぞ木賊するどし

「障害も個性」と軽く言ふなかれ苦しみ抜きて吾子は生きをり

みな黒い芋虫地下鉄のもっそりゆれる中にてゆれる

氷頭なまこ歯に沁むものを嚙みしめて夜の机にほれぼれとゐる

函・表紙・扉それぞれに美しくそこを通つてからが言葉だ

球を中に一つに動くルーズ・スクラムこの時の間を心張り来る

冬の夜は風雪炎のあそびあり飼いならすべし死もまたあそび

カポーティ―のお洒落短編読み終へていたく冷えたる鯖寿司つまむも

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