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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
染野 太朗
五階より見おろす庭に傘とかさ出逢ひてしばし画鋲のごとし
この世とは忘れてもよいことばかり蜆をひとつひとつ食みおり
空のなかから降りて来たのかみづいろの自転車風に輝いてゐる
別るるためまことわかるるため会いて五十三年 母を葬(はぶ)りぬ
何をみても何を聞いても掘割のむこうの木さえ動かぬものを
水飲めば水さむざむと胃にいたる人を憎みてありし一日か
批評めく言葉のあとのしずまりに病室(へや)に誰(た)がむく蜜柑がにおう
足裏の小さき白きが駆け抜ける土色のつち踏むわが心に
火星見えると地学部が全校放送し夜市のやうな屋上である
食べることのできない人に贈るため花はあるのか初めておもう
はなびらの触れて生れたる水紋のいちばん外側のような夜
黙ることは騙すことではないのだと短い自分の影踏みながら
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