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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
魚村 晋太郎
ヒヤシンスの根の伸びゆくをみつめいる直線だけで書ける「正直」
杉花粉に荒るるのどより朝まだき美しきあかき痰は出づるも
春霞山は新たな教科書の匂いのように横たわるなり
蝶の翅ならば三日の距離ならむ雨水(うすい)を過ぎて手紙は書けず
春塵をうっすらと置くポストぬぐう偽名も筆名も使わず生きて
啄める林檎の肉のたっぷりとありてひそけくながれゆく時
劣情が音立つるほど冷えている。きさらぎ、デスクワークのさなか
そらいろの小花にとりかこまれながら電信柱けふも芽ぶかず
再び若くなることあらじ昨年よりも幹太く濃く椿ひらきぬ
ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす
指半分出る手袋をして会えば指半分だけが見つめられたり
やや冷えしブリ大根を熱き飯(いひ)に載せてぞ食うぶ春立つあしたを
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