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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
魚村 晋太郎
木枯の生まれた海にゆくまでは文字はやさしい鍵だったのに
いびつなる青きくわりんを黄にかふるおほいなる手よ悲しみの手よ
忘れるといふ美徳もあるをまつかなる木々らだまつてしぐれてゐたり
刃を当てて剥きしなま栗円空のほとけの顔に似つつひそまる
目のまへのちひさな駅がなくなると知つてみている白いコスモス
漏斗(じょうご)のやうな月のひかりの底(そこひ)なる息子の部屋に息子はをらず
たけだけしき酢葉に種子の実りたりアメリカ種らしきがただにうとましく
水に乗る黄葉の影よろこびは遠まはりして膝へ寄り来つ
吾(あ)を生みしもの地にありと思へども二階にのぼり月にちかづく
毒のない方を選んでくださいとりんごの赤と黄が並べらる
さびしくてわが眼に蜻蛉(とんぼ)の尾がこぼす水の環はどこまでもひろがる
遠回りしつつ力をやしなひし台風の目の座りはじめつ
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