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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
魚村 晋太郎
麦藁帽似合ふ男になりきしを朝の鏡にふとさみしめり
頭(づ)のうへを蜻蛉つーい、つーい飛ぶ明日といふ日はあさつてのきのふ
このキスはすでに思い出くらくらと夏の野菜の熟れる夕ぐれ
夜の道に敷きたるゑんじゆ花殻の生(なま)しきを踏む靴の裏にて
メモ用紙置きて去りにし一人居て朝顔の花に載るほどの文字
いまだ日は長きに夏至の過ぎたるを繰り返し言う追われるごとく
なくでない泣いてはならぬと鳴く蝉の津浪のごとき号泣にあう
またちがふ蝉が鳴きだし窓のそとひとつづつふえてゆく距離があり
桑の實數千(すせん)熟れつつ腐るすでにして踰(こ)ゆべき海も主(しゆ)もわれになし
熱湯に月桃花茶のティーバッグふかく沈めてこの世にひとり
手の触れる範囲に誰かきつとゐるガマの闇からひそひそと声
もっともっとさみしくなるとガラス窓にあじさいは頭を押しつけてくる
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