Archive for the '今日の一首鑑賞' category

春の獅子座脚上げ歩むこの夜すぎ きみこそはとはの歩行者

手をとられなくてもできて鳩それももう瞠きつぱなしの鳩を

あそぶごと雲のうごける夕まぐれ近やま暗く遠やま明し

きみはきみばかりを愛しぼくはぼくばかりのおもいに逢う星の夜

三宮、元町過ぎてさびしかりうすくけぶれる山側に出て

ゆふづつのかゆきかくゆき春秋をがまなざしに揺るる星こそ

ことごとく人眠らせて国道を観光バスは過ぎてゆきたり

孵卵器の卵くるしげに歪むころ不潔な神話世に流布しだす

どのやうな手もやはらかにしてくれるクリームください焚火の色の

水面にかへる刹那の水しぶき激しく消えしものを見たりき

星あかりのわずかに届く闇を来てものやわらかな音楽ひとつ

意志表示せまり声なきこえを背にただ掌のなかにマッチ擦るのみ

ひとりぼろタクシーのなかで、へし折れたやうな街の後ずさるのを感じた

光透く翅をひろげし夜の蛾が我が臥す上を過ぎしときのま

前の前をゆくひとがさしているものの架空の植物の柄の傘 

暖冬の室内にて孵す紋白蝶複製モネをこえ曇りガラスに

南風モウパツサンがをみな子のふくら脛吹くよき愁ひ吹く

暖かき大麦の種子胸に抱き今来たらんかなしくづし、、、、、の死

まゆみの実ひとつ飲みまたひとつ飲みつぐみが連れてくるよゆふやみ

あけぼののあからむ東尾をひきて投げられし白球たま男の子らの聲

どうしても声のかわりに鹿が出る あぶないっていうだけであぶない

仰ぎ見て我が天才を疑わず天地ひれ伏せ十六の夏

舟屋ってけっこう広いTシャツとカマスの干物が二月に吹かれ

一九四九年夏世界の黄昏れに一ぴきの白い山羊がゆれている

硝子が森に還れないことさびしくてあなたの敬語の語尾がゆらぐよ

ひたぶるに夜半のくらきに白蛾とぶその重き夜に堪へてゐたりき 

破壊もまた天使であるとグレゴリオ聖歌が冬の神戸を駆ける

くららかに思想の鞍部見さけつつけふをいのちと旅果ててゆけ 

高架下の長めに生きる猫たちに睨まれつつもかずを数える

人も馬も道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ

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