Archive for the '今日の一首鑑賞' category

絵本には死の苦しみが描かれぬと言ふ子の不満さいごまで聴く

夕顔乾酪チーズ色にくさりて惨劇のわが家明くるなり*おはやう刑事!

はじめてのように見る虹 消えてゆく記憶のほうがいつでも多い

かけがへなき変身して森に樹をみがけ 風よりも風のやうに否定の像あり

ふる花をひろいながらに来るこども遠く見ゆ遠けれどよく見ゆ

陸奥みちのくのなほ奥ありて雪氷とざせるなかに火立ほだついのちは

ひとり子の先立ちしマリアの老後など思つてをればいひたきあがる

松影を浴みつゝゆくは哀しかり跳びかがよへる斑猫みちをしへかも

結婚二十年のひかりはどことなく凍蝶に似てしづかなひかり

青鷺、とあなたが指してくれた日の川のひかりを覚えていたい

飲みかけの缶コーヒーがあたたまる間もなく冷たくなって笑える

くらがりになほやみと呼ぶぬばたまの生きものが居て芝のうごく

木の影とわたしの影のまじりあひとても無口な道となりたり

藻のなかにひそむゐもりの赤き腹はつか見そめてうつつともなし 

針葉樹は燃えやすい樹といつ誰に教はつたのか、空よ、夕焼け

友人がベジタブラーになったらしいならなくていいと思いました

空席を探すあなたを淡い陽はジョルジュスーラの絵にしてしまう

死ぬもよし死なぬもよろし又ひとつどうでもよしの春は来にけり

何歳になったの? などと子はわれを木の葉木菟コノハヅクのように見つめる

かが鳴きて夕はかへる荒鷲のつばさにしのぐ筑波やま風

咽喉ふかくうるほしうるほし生きてゆく目白も日雀も四十雀はも

星座を結ぶ線みたいだよ 弟の名前を呼んで白髪を抜けり

べつべつに絵を視ることになれてゆく河口のやうな午後のうすら陽

しろくま科プランクトンが溺れててシャンパンに浮く彼らの気泡

鉛筆のごとく心はとがりゆき朝の道路がまっすぐになる

捨てられた都ばかりが大きくて今は胎児に帰るうみへび

紅い薔薇が一本風に飛ばされて陽のなかのフイッツジェラルドの墓

姉さんは今宵帰らず硝子窓力なく鳴る 冬が来ていた

お父さん大嫌いって子に言われしばらく蜜柑がむけなかった

ゆふまぐれ、とふ語の確實性のことなど思ひつつ江ノ電を待つ

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