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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
久我 田鶴子
片側を闇にのまれてそよぐ樹を観ればかつてのわたくしならむ
匂ひの記憶、ではなく記憶そのものの匂ひとおもふ四月の雨は
ひとすぢに朝光は入り布のうへの黒く熟れたるアボカドの照る
轟きをしばらく宙に残しつつこの世の淵へ降りてくる水
今という狭間に揺れる水面のひかりに隠れている暗がりは
電柱の根元にタンポポ咲いていて 生命保険審査に落ちる
忘恩というえにしあり花咲けばゆるむこころのあわれなりけり
青き空 わたしの上にひるがえる旗には「壊せ神殿を」とありぬ
われの名は魚と言えばああ鮎かと答えぬ不思議そうに見つめて
埋められて兵の片足天を指す時経るほどに脳裏を去らず
樹によれば樹、地に臥せば地の命なり 弾はずれ来て我を生みし母
夕焼けと青空せめぎあう時を「明う暗う」と呼ぶ島のひと
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