光森裕樹のアーカイブ

こわいのよ われに似る子が突然に空の奥処を指さすことも

僕たちは生きる、わらう、たべる、ねむる、へんにあかるい共同墓地で

わたあめ屋歩めばさらにわたあめ屋売る人の顔みな同じなる

吉野家の向かいの客が食べ終わりほぼ同じ客がその席に着く

急行を待つ行列のうしろでは「オランウータン食べられますか」

きっと血のように栞を垂らしてるあなたに貸したままのあの本

夏なのに咲かない向日葵 泣いていた記憶ばかりが鮮明、ずっと

太陽の沈まぬ国のひまはりは首落つるまで陽を追ふといふ

陽炎に裏表ある確信を持ちてしずかに板の間に伏す

炎昼の往還に人絶えぬればあらはるる平沼銃砲火薬店

幼年時代の記憶をたどれば野の果てで幾度も同じ葬列に会う

七月十七日かなかな鳴けり幾度か短く鳴けり夜のベランダに

モナリザは笑みてをらずと夢に来し誰かは言へり雨月ふかき夜

「蠅はみんな同じ夢を見る」といふ静けき真昼 ひとを待ちをり

橋なかば傘めぐらせば川下に同じ橋あり人と馬行く

さびしさに死ぬことなくて春の夜のぶらんこを漕ぐおとなの軀

いつか死ぬ点で気が合う二人なりバームクウヘン持って山へ行く

卓のグラスに映れるわれら人生のこの一齣も劇的ならず

このビルの完成予定のきょうまでになんか変わっているはずだった

違う世にあらば覇王となるはずの彼と僕とが観覧車にゐる

銀行に銀の冷房臭みちて他人(ひと)の記憶のなかを生きをり

下じきをくにゃりくにゃりと鳴らしつつ前世の記憶よみがえる夜

はい、あたし生まれ変わったら君になりたいくらいに君が好きです。

予定日は桜桃忌にて霧深しわが子の晩年をなつかしむ

人間の生まれる前は人間の生まれる確率0だつた星

鋪装厚き道にて人は行き交へり豊かに生まれうまれ継ぎつつ

死んだつてひとりぼつちだ生きたつてひとりぼつちだ世界は馬鹿だ

ぼくは流す
やさしいオンガク空のほう
人生のリセットボタンをおすとき

髪の毛をしきりにいじり空を見る 生まれたらもう傷ついていた

(しはぶき)不意に出る心地してああぼくは一千年を生きねばならぬ

月別アーカイブ


著者別アーカイブ