光森裕樹のアーカイブ

6月の2日の朝に夏が来てあなたに会うので夏バテしそう

ヴェランダは散らかっていて六月の台風がもうじきやってくる

すずやかな空の青さで顔を洗う心地のあした七月となる

波とほく寄する耳鳴り 八月の雲が厚みを増してゆくとき

天からのサインが風に溶けてゐて諦めよといふ九月の朝に

十月の孟宗竹よそうですか空はそんなに冷えていますか

水薬の表面張力ゆれやまず空に電線鳴る十一月

灰色の空見上げればゆらゆらと死んだ眼に似た十二月の雪

舞い上がるぺらぺらな紙このままで十三月の空に死にたし

あおあおと一月の空澄めるとき幻の凧なか空に浮く

約束をつんと破ってみたくなる二月の空にもりあがる月

しみじみと三月の空ははれあがりもしもし山崎方代ですが

捨て猫の瞳の底に銀の砂 四月の雨はふいに降りやむ

五月の樹をゆるがせて風来たるのち芯までわれを濡らす雨あれ

小道さへ名前をもてるこの国で昨日も今日も我は呼ばれず

民族が違ふと言はれ黙したり沖縄(うちなー)びとにまじりて座せば

パチンコをしつつ嬉しもニイチヤンと隣の台の男に呼ばれ

(きのこ)たちの月見の宴に招かれぬほのかに毒を持つものとして

ひらがなで名を呼ばれたりはつなつの朝のひかりのテーブル越しに

フジワラちゃんと呼ばれることもうべなえばああなまぬるき業界の風

野口あや子。あだ名「極道」ハンカチを口に咥えて手を洗いたり

ハンカチを落としましたよああこれは僕が鬼だということですか

君でない男に言われ立ち止まる「あなたが淋しい人だから」など

俺は詩人だバカヤローと怒鳴つて社を出でて行くことを夢想す

来ないでよ母さんだけが若くない お前に言われる日がきっと来る

「駄目なのよ経済力のない人と言われて財布を見ているようじゃ」

変人と思われながら生きてゆく自転車ギヤは一番軽く

新姓を貼り付けられて生き延びるこのベランダは終着点なり

「自由を謳歌」ってひとりぐらしのトイレにも鍵かけているわたくしが、か

恋愛にはるかに遠き関係として呼び出されたること多し

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