吉田隼人のアーカイブ

銀の燭かすかに吊し目覚めてはねては青き花食べにけり

機関庫の春のさびしさ鳩さへも白きはね染むその炭塵に

刺青は沖に菫の色もてりはてしなく海にそそぐ雪片

夏ははやいきいたづき苦しむかつがひたる蝶むなしきに舞ふ

百円で上下するのみの飛行機に乗りしよろこびも上質のもの

手をとられなくてもできて鳩それももう瞠きつぱなしの鳩を

きみはきみばかりを愛しぼくはぼくばかりのおもいに逢う星の夜

ゆふづつのかゆきかくゆき春秋をがまなざしに揺るる星こそ

孵卵器の卵くるしげに歪むころ不潔な神話世に流布しだす

水面にかへる刹那の水しぶき激しく消えしものを見たりき

意志表示せまり声なきこえを背にただ掌のなかにマッチ擦るのみ

光透く翅をひろげし夜の蛾が我が臥す上を過ぎしときのま

暖冬の室内にて孵す紋白蝶複製モネをこえ曇りガラスに

暖かき大麦の種子胸に抱き今来たらんかなしくづし、、、、、の死

あけぼののあからむ東尾をひきて投げられし白球たま男の子らの聲

仰ぎ見て我が天才を疑わず天地ひれ伏せ十六の夏

一九四九年夏世界の黄昏れに一ぴきの白い山羊がゆれている

ひたぶるに夜半のくらきに白蛾とぶその重き夜に堪へてゐたりき 

くららかに思想の鞍部見さけつつけふをいのちと旅果ててゆけ 

人も馬も道ゆきつかれ死ににけり。旅寝かさなるほどのかそけさ

夕顔乾酪チーズ色にくさりて惨劇のわが家明くるなり*おはやう刑事!

かけがへなき変身して森に樹をみがけ 風よりも風のやうに否定の像あり

陸奥みちのくのなほ奥ありて雪氷とざせるなかに火立ほだついのちは

松影を浴みつゝゆくは哀しかり跳びかがよへる斑猫みちをしへかも

青鷺、とあなたが指してくれた日の川のひかりを覚えていたい

くらがりになほやみと呼ぶぬばたまの生きものが居て芝のうごく

藻のなかにひそむゐもりの赤き腹はつか見そめてうつつともなし 

友人がベジタブラーになったらしいならなくていいと思いました

死ぬもよし死なぬもよろし又ひとつどうでもよしの春は来にけり

かが鳴きて夕はかへる荒鷲のつばさにしのぐ筑波やま風

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