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砂子屋書房 一首鑑賞
日々のクオリア
投稿者:
吉野 裕之
幼子は幼子をふと見返りぬふたつ家族のすれ違ふとき
たましひが躰のなかで泪する しづかにひととき泣かせてやりぬ
午後四時の地下鉄に誰もまどろみて都市の腸(はらわた)しづかに傷(いた)む
地球は洋梨の形であると書かれをり うふふふふふと読みつつ笑ふ
夏草のくさむらふかく住む母のポストにま白な封書きている
少年はいつもむきだし 天からの手紙に濡るるその眉と肩
冬日てる街あゆみ来て思ひがけず吾が視野のなかに黒き貨車(くわしや)あり
冬天に残る柘榴のひとつのみ瑕瑾だらけといふが愛しも
芝の上(え)のわが椅子倒し昨夜またさびしく八ヶ岳颪ゆきしか
わが家の貯えなどを妻に問う夜の川辺の歩行のおわり
カーテンのむかうに見ゆる夕雲を位牌にも見せたくて夏の日
みどりのバナナぎつしりと詰め室(むろ)をしめガスを放つはおそろしき仕事
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